放火犯の「逆検索」と女性人権問題の関係

訴訟大国アメリカでは殺人犯も、受刑者も「違う!」と思えば訴訟を起こします。

そういえばひと昔前、刑務所から逃げて捕まった受刑者が「刑務所の制服が目立ちやすいから自分は捕まってしまったんだ!」と訴訟を起こしたという話をきいたことがあります・・。

今回は殺人犯からの訴訟、でも今までの意味不明なものとは違う。

また、殺人を誰かのせいにするようなものかと思いきや

その訴えの行く末は女性の人権問題にもつながる、深く考えさせられるものなのです。

17歳の少年による放火殺人事件

2020年8月コロラド州デンバー、15歳と17歳の少年らは薬物取引で金銭をだまし取られた報復として住宅街にある家に放火。ところが家を間違えて放火、何の罪もない家族5人が亡くなりました。

警察は犯人を捜す際、グーグルにこの家の住所を検索した人物を見つけるために履歴検索を依頼。その結果少年らの逮捕に至った。

ところがこの17歳の少年は警察による犯人捜索の為のグーグル検索履歴の利用に異議を唱え訴えをおこしました。

17歳の少年の代理人によると2020年8月5日に放火される以前、この家の住所を入力したユーザーがいないか、インターネット検索の膨大なデータベースを確認するようグーグルに命じるよう裁判官に依頼をした警察は憲法に違反したと訴えている。

犯人が検索バーにアドレスを入力したであろう、という直感に基づいて、何十億ものグーグルユーザーのクエリを介して検索するということはアメリカ憲法修正第4条の「不当な捜査から保護」に違反するというもの。この逆検索から得られたすべての証拠は、捨てられるべきであると述べている。

この逆検索はこれまで多くの犯罪の検挙につながっているが、従来の捜査方法にくらべて、警察は「容疑者の名前を知らないまま、容疑者につながる可能性のある情報を求めて捜査」するというところが大きく異なるのです。

つまり、犯罪が発生して、警察がその犯罪を犯したであろう疑いのある人をある程度特定した後にその人物に対する証拠捜査をするのではなく「法律に違反していると思われる人々」をグーグルを介して一斉調査することができてしまう。

Photo by cottonbro

もっと大きな問題に

もう一つ、この「逆検索」が今年6月24日以降アメリカこれまでに増して注目、懸念されている理由があるのです。

それは、アメリカ最高裁が妊娠中絶の権利を認めていた「ロー対ウェイド裁判」を覆し、これを受けアメリカ複数の州で妊娠中絶、またその補助をが違法化された今、この逆検索が、中絶を違法とした州での違法な中絶の捜査にまで拡大するのではないかという懸念。 

つまり、妊娠中絶が違法化された州の警察がグーグルに逆検索を依頼し、中絶施術を考えている、施術求めている人やそれを補助しようとしている人を割り出し逮捕することができてしまうのではないかということ。

この17歳の少年の訴えが認められるか認められないかの判決は、この17歳の少年の罪の行く末を左右するだけではなく、今後の警察捜査、プライバシー保護、そして女性人権保護にまで広がる重要な判決になりそうです。

Photo by Paddy O Sullivan