カジノも対策に協力、人身売買防止トレーニング

今回はラスベガス現地警察による「性犯罪・人身売買防止」トレーニングを受けてきました。

なぜ?突然性犯罪・人身売買防止トレーニングを受けたの?と思われるかもしれませんが、これはマネー・ロンダリングの犯罪防止がマネーロンダリング対策ACAMS(金融犯罪(マネー・ロンダリング対策)の国際的組織)のラスベガス支部によって先日開催されたもので、

犯罪から得られた資金を犯罪隠ぺい目的で金融取引を通してその足跡を消し去るのがマネー・ロンダリング。そしてその元の犯罪に多いのが性犯罪・性的人身売買。マネー・ロンダリング犯罪に関連していることが多く、摘発が難しい性犯罪・人身売買という犯罪を理解しようという趣旨。

決してマネー・ロンダリング捜査をすれば元の犯罪の摘発につながるというわけではありませんが、マネー・ロンダリングに関連する犯罪の現状を理解し、24時間の繁華街を抱えるラスベガスカジノ業界としても積極的に性犯罪・人身売買という犯罪の現状を理解し、警察と協力して犯罪防止に取り組もうというラスベガス支部の取り組みです。

人身売買とは世界で2番目に多い犯罪

人身売買は麻薬に次いで世界でも2位の犯罪で強制労働、強制結婚、性的搾取などの犯罪行為です。人身売買とは世界で2番目に多い犯罪で、日本の警視庁による発表でも人身売買は年々増加傾向にあるそうです。被害者の多くは女性、そして未成年者が多い。アメリカでは11歳、13歳の少女までもが被害者となるケースも増加中。

犯罪者は土地に慣れない人物や、家出人、社会経験の少ないナイーブな人物や弱みを握った女性などにターゲットを絞り近づく。

アメリカの人身売買の特徴

特徴① 「グルーミング」

アメリカで多く見られる人身売買は性的搾取が多く、被害者の多くは強制売春に利用されます。また、映画で描写されるような「連れ去り、誘拐」もありますが多くの場合は「グルーミング(仕立て上げ)」によるものが多いのです。つまり、犯罪者は交際関係からや友達などを装い被害者に近づき、時間をかけて被害者を自分の言いなりに仕立て上げる。中には被害者が心理的に犯罪者を信用してしまい、被害に遭っている中でも決して裏切って通報をしないほどに洗脳されてしまうことも少なくはないのだとか。

学校のイベントやフェスティバル、ショッピングセンターなど楽しいイベントの場で被害者に声をかける犯罪者が多いとのこと。また、コロナによって犯罪者もオンラインの活用が急増。

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特徴② 「ノルマ」

多くの人身売買はギャング、組織犯罪に関連。被害者の多くである女性は毎日「ノルマ」が課され、毎日ギャングや組織犯罪の一員である支配者(ピンプ)に収める収入を稼いでいます。そのため、ノルマを稼がないと寝場所が確保できない被害者は売春以外にも強盗や窃盗を行いノルマ金を稼ごうとします。

一方、売春やデート、援助交際でお財布を盗まれた!と届け出る被害者はおらず(自分も犯罪者となるのを恐る、家族や友人にバレるのを恐れる)、そのため人身売買の被害者女性を救出する機会も少ないとのこと。

特徴③ 摘発が難しい

これはアメリカだけではないと思いますが、ラスベガス警察によると人身売買の摘発がとても難しいとのこと。多くの被害者が借金を抱えた(もしくは借金をしているとだまされた)被害者や家出をして行くところのない未成年、ホームレスになるよりましだと人身売買者の元で働く被害者。そして多くは警察に通報すると家族の身が危ないなどと脅されている。よって被害者がすすんで通報をしてくることは少ないのだとか。

特徴④ 「マーキング」

被害者の多くは身分証明書を取り上げられ、人身売買者の奴隷のように扱われる。そのため、アメリカの人身売買犯罪ではよく支配者(ピンプ)被害者にタトゥーで印をつけ、犯罪者の所有物であるかのように見せる傾向がある(マーキングと呼ぶ)。

また、ピンプは何人ものマーキングをされた女性を抱えていることが多く、その中で長年そのピンプの下で働いてきた被害者である女性(「Bottumボトム」とも呼ばれる)が新しい被害者の監視を行うこともあるという。被害者が他の新しい被害者を勧誘したり、監視する悲しい現状。中にはお姉さん友達のように近づき勧誘をするボトムも。

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特徴⑤ マネー・ロンダリング

ノルマ稼ぎに働かされている女性はその稼ぎをそのまま自身を支配しているピンプに渡すことはなく、オンライン送金やシェル会社(架空の会社)などに納金をする。警察の捜査の中でも何も製品を販売していない会社なのに毎晩1000ドル(10万円)以上の金額が他方から入金されている会社という怪しい会社も多くでてくるそう。

一般市民や企業などはどう対応すべき?

前述の通り、被害者の多くは洗脳されてしまっているか、何らかの脅迫などによる恐怖から自身で地元のヘルプセンターや警察になかなか出向き助けを求めることはないそう。

また、警察に「大丈夫?どこからきたの」と聞かれてもあらかじめ暗記している回答でその場を去るようにトレーニングをされている被害者も多いとのこと。

ラスベガス警察のヘルプセンターによると人身売買者の被害者の多くは平均5~7回ほど通報を試みては止め、試みては止めと繰り返し自身が何らかの犯罪で逮捕をされるか、客やピンプからの暴力などから生死の危機にさらされ病院に救急車で運ばれるといったような事態になるまで決して自身で助けを求めることはないという。

そんな摘発も、ヘルプも難しい人身売買という犯罪に対して、一般市民や企業としては何かできるか?という質問に登壇していた警察5名全員が「トレーニング」「告知」と回答。

人身売買対策は「トレーニング」と「告知」

「トレーニング」

皆さんも人身売買と聞くと、映画の話。海外の話。と思われがちかもしれませんが、実はアメリカ、ラスベガスの住人も普通に生活していると自分にはあまり関係ない話と思いがち。

しかし、実は何か弱みを握られ強制労働をしている、性的搾取に遭っている人は沢山隠れています。今回私が受けた約2時間のトレーニング以外にも警視庁や人身売買被害者保護団体などのウェブサイトで人身売買についての知識を少しでも良いので持っておく。

そして、何か異変に気づいたら次のように行動をしましょう。

  • ヒーローになって自分で関与は決してしないこと。

犯罪者に立ち向かったり、被害者を連れ去るなどの行動には出ないこと。

  • そのシチュエーションを確認、適切に通報を

緊急なら110番、警戒なら近くの警察もしくはヘルプラインへ連絡。

  • 周りを見渡し何か後に被害者保護に役立ちそうな情報があれば記録

前述の通り、被害者は自ら通報はしないケースも多い、自身で確認できる様子や情報を記録しておき必要となれば目撃者として正しい情報を報告できるように。

人身売買を遠い存在と思わず存在を認識することがとても重要です。そしてこのブログを読んで頂けるだけでもOK。人身売買について一般知識を持っておきます。

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人身売買防止対策をしていると「告知」

誘拐犯は警報機があるお店とないお店だと、誘拐するのに警報機があるお店は避けますよね?

それと同じ。カジノ企業のみならず多くの人が出入りをするショッピングセンターを運営する企業、テナントリテール店舗、などは「従業員が人身売買について知っています!」「皆トレーニングを受けて人身売買の赤信号をみわけることができます!」といった告知を行うことも犯罪者に警告をすることに役立つそうです。プレスリリースでも張り紙でもなんでも良いので人身売買についての警告を公示。つまり、誘拐や勧誘を試みる犯罪者に直接警報をならすということです。

今回はちょっとダークな内容でしたが、目を背けてはいけない重要な犯罪の現状をお伝えしました。州をまたぐ大きな高速道路に近い位置にあり、24時間賑わう繁華街があるラスベガスではカジノ企業も特に犯罪防止に気を配り、来客者が安全に楽しい時間を過ごせるように努めています。

また、アメリカだけではなく日本でも、企業以外の一般のみなさんにとってはここまで読んでいただいただけでも十分な情報ですので是非この理解を元に何か少しでも異変に気付いたら適切に対応できるようにしておきましょう。