アメリカでは「人種・民族問題」でタブーなネーミング

日本に比べるとアメリカには多くの異なった文化背景や生活習慣を持つ人々が混在、ダイバーシティが豊かです。その分、先日お伝えした「キューピーマヨネーズちゃんがアメリカでNGな理由」記事にもあるようにそのダイバーシティ豊かな消費者への細やかな配慮が必要です。

宗教、文化、民族、性別、体型、家計、障害などなど様々な問題がありますが、今回は「人種・民族問題」にフォーカスをおいて日本企業がアメリカ進出、アメリカ消費者へ向けて製品を開発・販売する際に慎重に考慮すべき内容をお伝えします。

アメリカの人種・民族問題の背景

アメリカにはアメリカ先住民族(ネイティブアメリカン)、アフリカンアメリカン系奴隷制度などの歴史的経緯、反イスラム教徒、反ユダヤ人、各国からの移民との問題など日々解決すべき問題が多くあります。そして、そんな多様な人種・民族が混ざり合って社会を形成しているがゆえに企業は自社のブランドや製品名が消費者の気を損ねることのないよう細心の注意を払っています。

アメリカ先住民族(ネイティブアメリカン)への配慮

スポーツチーム名変更

元々は1933年にネイティブ・アメリカン民族全体へと、当時の監督と選手4人がネイティブ・アメリカンであったことに敬意を表して、名付けられたアメリカンフットボールチームの「ワシントンレッドスキンズ」。近年、「レッドスキン(赤い肌)」がネイティブアメリカンに対してつかわれることがある俗語であることが問題となり、チーム名を変更しました。変更前のチームロゴも一見「強そうなネイティブアメリカンの戦士」のようなロゴでしたが、これも変更されました。

バターのブランドロゴ変更

バターのブランドLand O’Lakes(ランドオレイクス)も以前使用されていたネイティブアメリカン女性が膝をついて座っているロゴを一新。ネイティブアメリカン女性が膝をつくという姿が「支配者」に対して膝をついているというイメージを沸かせてしまい、ネイティブアメリカンが直面した辛い過去を思わせるということでNGに。

日本からの目線でみると、きれいな自然いっぱいで女性が自然の恵みに感謝するように見える雰囲気のロゴでしたが、アメリカのアメリカ先住民族(ネイティブアメリカン)問題を考えると必ずしもそうとは見えないのです。

以前はこの真ん中の「O」の部分にネイティブアメリカン風の衣装を着た女性がいましたがいまは「O」のみ。92年間使用されてきたデザインは変更されました。写真はwww.landolakes.com社製品ウェブサイトより引用

「イメージがきれいだから、インパクトがあるから」とネガティブな意図は全くなくともある民族や文化背景からみるとそうではない場合が多くあります。よってアメリカ消費者は多文化の言葉やイメージを勝手に取り入れるということにははとても敏感です。

とても敏感な多文化との交流や配慮

ソーシャルメディアなどでも日本の文化や食べもの紹介する際インフルエンサーたちは一言「もし間違った日本語の読み方だったらごめんなさい」「日本の方に失礼のないようにちゃんと背景調べたのですがまちがってたら教えてくださいね」と彼らから見た「多文化」への配慮を口にします。コメントで質問をするフォロワーたちの言葉も同じ。「アメリカ=支配者」「アメリカ=世界一」と思っていると勘違いされないよう、多文化の方を傷つけないよう注意して言葉を選んでいます。

それほどアメリカ視聴者や消費者の反響が敏感だということを示していますし、アメリカの企業も日本では考えられないほどとても慎重です。

ロゴに多文化の人物や物を採用する、ネーミングに採用する場合は十分に調査をした上で検討してください。

アフリカンアメリカン系民への配慮

ミセスバターワースのシロップボトル

Mrs. Butterworth(ミセスバターワース)のシロップはアメリカでは長年愛されている甘いパンケーキにかけるシロップ。このシロップは女性の「メイド」さんのような形をしていることから「奴隷制度」を思わせると長年異議があがっています。現在このボトルデザインは変更が検討されています。

「メイド」さんのようなボトルデザインは変更検討中

アンクルベンのインスタントライス

Uncle Ben(アンクルベン)のインスタントライス。アフリカンアメリカン系のおじさんの顔がロゴとなっているインスタントライス商品でですが、昔アフリカンアメリカン系人に対して「ミスター」などといった敬称をつけたくない人々が敬称を避けるために「アンクル〇〇(○○おじさん)」と代わりに呼んでいたという背景があり、商品名がアフリカンアメリカン系消費者にとって気分を害する過去を思わせるものだと異議があり。現在ブランド名改訂審議中だそうです。(〇〇おじさん、というのは日本だと普通に聞こえますが、そうではない場合もあるのです)。

以前はアフリカンアメリカン系のおじさんの顔のロゴと「Uncle Ben’s」とありましたが今は「Ben’s 」のみになり、Uncleは消されています。
こちらのシロップも「AuntJemima(ジェマイマおばさん)の顔と名前が商品名でしたが、アンクルベンと同じく、差別的過去につながるということで製品名が改訂されました。

ホワイトニングエッセンスはNG

また、日本ではよくつかわれる化粧品の広告にある「ホワイトニング」。これはアメリカンが見るとびっくりする言葉。アフリカンアメリカン系のダークカラーの肌を白化させる。つまり、ダークカラーより白肌の方が良いという誤ったメッセージを含んでしまいます。大手コスメ会社なども製品には「フェア(色白)」「ライト(明るい)」「ホワイトニング」といった言葉は使わず色味に名前を付けたり、番号を使用しています。(差別につながりうる言葉を使っている会社さんも多くありますが、敏感な消費者は「そんな会社からは買わない」とボイコットをする場合もあります)。

アフリカンアメリカン系消費者への配慮として、アメリカでは差別的イメージを含んでしまうことがないよう「肌の色」に関する言葉や表現、「支配者と労働者」「プランテーション」など奴隷制度の記憶を呼び起こしてしまうもの、またはそのような過去に関連する場所や建造物や人物にちなんだロゴやネーミングは使用しません。

メキシコ、ラテン地域消費者への配慮

隣国メキシコからは年間多くの移民がアメリカへ移住してきていますが、メキシコ系消費者への差別も存在します。例えばバナナのブランド「チキータ」。以前はバナナの女性がドレスを着ているロゴでしたが、その「バナナ」というイメージがメキシコ系民への軽蔑的イメージにあたるとして使用停止。現在では女性がフルーツバスケットを持った姿に変更されました。

メキシコ、ラテン地域消費者への配慮として、アメリカでは「褐色の肌の色」「労働者(アメリカへの出稼ぎ労働者も多い)」と軽蔑的に使われることのあるメキシコ系移民への差別的表現を思わせる、関連する表現やロゴ、名前は使用しません。

このように日本にいると気付かないアメリカの深い社会背景。近年の人種・民族問題の摩擦で消費者はより敏感になっています。

アメリカで製品を販売する際の製品名や広告のキャッチフレーズなど決める際は十分に調査を、そして現地企業などに確認した上で、インパクトのある、売り上げの上がるネーミングを決めてくださいね。

Photo by fauxels