ラスベガスが変えた「カジノの常識」世界最大カジノ都市のビジネスモデルと大阪IR成功のヒント
- Prism ラスベガス

- 1 日前
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カジノ・ホテル・スポーツ・エンタメの融合。観光と税収、雇用を循環させる「ラスベガスモデル」とは?
今、ラスベガスの街はかつての「ギャンブルの街」から、カジノ・ホテル・スポーツ・エンタメが融合するIR統合型リゾート都市(IR)へと進化しています。
日本でも2025年の開業を目指して大阪IR(大阪カジノリゾート)が本格始動しました。世界最大のカジノ都市ラスベガスのビジネスモデルは、日本のIR開発が成功するための重要なヒントを与えています。今回はそんな進化する世界最大カジノ都市ラスベガスのビジネスモデルをご紹介します。
ラスベガスを支えるカジノリゾート企業
ラスベガスには、世界を代表するカジノ・リゾート企業が拠点を構えています。これらの企業はアメリカの証券取引所(NYSE、NASDAQ)に上場しており、統合型リゾート(IR)ビジネスを通じてグローバルに事業を展開しています。以下は、ラスベガスでカジノを運営している代表的な上場企業の一覧です。
1. MGMリゾーツ・インターナショナル(MGM Resorts International)
ラスベガスを代表する統合型リゾート運営企業で、ベラージオ、MGMグランド、アリア、パークMGMなど多数の大型カジノホテルを所有・運営しています。また、日本の大阪IR(MGM大阪)の主要事業者としても知られています。
2. ウィン・リゾーツ(Wynn Resorts Limited)
高級志向のカジノリゾートを展開し、ラスベガスの「ウィン・ラスベガス」と「アンコール・ラスベガス」を運営。マカオにも進出しており、国際的なブランド力を持つ企業です。
3. ラスベガス・サンズ(Las Vegas Sands Corp.)
ラスベガスを拠点に誕生した世界的な統合型リゾート(IR)運営企業です。「ベネチアン・ラスベガス」や「パラッツォ・ラスベガス」などを手掛け、マカオやシンガポール(マリーナベイ・サンズ)へ事業を拡大し、現在では世界最大級のIR運営企業として位置づけられています。
4. ボイド・ゲーミング(Boyd Gaming Corporation)
ネバダ州を中心にローカル向けカジノを多数展開しており、ラスベガスではオーリンズカジノ、フリーモント・ホテル&カジノなどを運営しています。地域密着型の経営で観光客だけではなく地元民でも賑わうカジノ。
5. レッドロック・リゾーツ(Red Rock Resorts, Inc.)
ステーション・カジノ・グループの親会社で、ラスベガス郊外に複数の地域型カジノ施設とカジノリゾートを合計17店舗展開しています。ローカル層を中心に支持される戦略で、観光客向けの超大型カジノに負けない人気ぶりで成長を続けています。

カジノからIRへ:ラスベガスの三層ビジネス構造
ラスベガスの主要産業はカジノ。
上記に述べたような主要カジノ企業は収益アベニューが大きく3つに分かれています。
①カジノ(ゲーミング/Gaming)
②宿泊・飲食・ショーなどの非ゲーミング(ノン・ゲーミング/Non-Gaming)
③コンベンション・スポーツエンターテイメント(Convention & Sports Entertainment)
このように大手カジノ企業はエンターテインメントや宿泊、MICEを中心に多角的な収益体制を築いています。この構造が、ラスベガスを「世界最大の統合型リゾート都市」へ押し上げた要因です。カジノ単体ではなく、複数の収益軸を組み合わせることで、街全体の経済が安定的に成長しています。
スポーツが新しいカジノになる
NHL・WNBA・NFL・MLB・F1が生む経済波及効果
2020年代のラスベガスを象徴するのは、スポーツの経済化です。その火つけ役となったのが、NHLアイスホッケーチームの「ベガス・ゴールデンナイツ(Vegas Golden Knights)」です。2017年にラスベガス初のメジャープロスポーツチームとして誕生し、参入初年度からスタンレーカップ決勝に進出。2023年には悲願の初優勝を果たし、地元ファンを中心に街全体がゴールド一色に染まりました。1シーズンを通じた直接的な経済効果は約6億ドル(約900億円)規模と推定され、チケット・グッズ・観光・飲食を含め、地元ビジネスを活性化させています。この成功が、ラスベガスを「スポーツフランチャイズが定着する都市」へと変えた最初の転換点でした。
続いて勢いを加速させたのが、女子プロバスケットボールチームの「ラスベガス・エイシーズ(Las Vegas Aces)」です。エイシーズは2022年、2023年、2025年のWNBAファイナルで優勝。女性アスリートの活躍と人気が高まる中で、ラスベガスは「女性スポーツの聖地」としての新しいブランド価値を確立しています。エイシーズの成功は、女性ファンや家族層の観戦需要を拡大させ、カジノ中心だった街に健全で多様なエンターテインメント文化を根付かせる大きな契機となりました。
2020年にはNFLプロアメフトチーム「ラスベガス・レイダース(Las Vegas Raiders)」がカリフォルニア州オークランドから本拠地を移転、カジノ街に本拠地であるアレジアント・スタジアム(Allegiant Stadium)が建設されました。このスタジアムでは、アメフト試合含め年間70件以上のイベントを開催し、地域の非ゲーミング収益の柱として定着しています。ホームゲーム1試合あたりの平均観客数は約62,000人、1シーズンで推定6億5,000万ドル(約975億円)超の経済効果を生み出しています。2024年には全米一大イベントでもあるアメフト優勝戦スーパーボウルLVIIIが同スタジアムで開催され、その週だけで約18億ドル(約2,700億円)の地域経済効果を記録。ホテル稼働率は99%を超え、各国各地から多くの富裕層がプライベートジェットで来訪(駐機場が足りなくなるほどの賑わい)、一般航空需要も急増しました。
続いて、2023年に初開催されたF1ラスベガスGPでは、わずか1週間で約15億ドル(約2,250億円)の経済波及効果を生み出しました。州と地方自治体への税収は約7,700万ドル(約115億円)に達し、ホテルの稼働率はほぼ100%、スイートからコースを一望できるVIP席は1泊1万ドル(約150万円)を超えても完売。ストリップ全体が一大スポーツステージへと変貌し、まさに“街がレース会場”となった象徴的な一週間でした。
翌2024年にも開催された第2回ラスベガスGPでは、経済効果は1週間で約9億3,400万ドル(約1,400億円)を記録。総来場者数は約30万人を超え、1人あたりの平均滞在支出は約2,400ドル(約36万円)と試算されています。そして今年2025年も「F1ラスベガスGP(Formula 1 Heineken Las Vegas Grand Prix)」が2025年11月20日〜22日に再び開催される予定です。すでに市内ホテルは予約が埋まりつつあり、開催期間中の観光消費は10億ドル(約1,500億円)規模に達すると予測されています。現在のところ2027年までラスベガスGPの開催が決定されており、F1はもはや一過性のイベントではなく、ラスベガス経済を牽引する都市型スポーツ資産へと成長しました。
さらに、今年MLBプロ野球「元:オークランド・アスレチックス(Oakland Athletics)・現 :アスレチックス(Athletics)」のラスベガス移転が正式決定し、ストリップ沿いのトロピカーナホテルの跡地では約17億ドル(約2,550億円)規模の新ドーム球場が建設中です。州と郡による公的支援は約3億8,000万ドル(約570億円)、残りはチームと民間資本によって賄われています。この「民間主導+限定的な公的支援」という財源モデルが、ラスベガスの都市開発を支える基盤となっています。
このように、NHL・WNBA・NFL・MLB・F1という世界主要リーグが集結する都市となったことで、ラスベガスは「カジノ×スポーツ×エンターテインメント」が融合した全米唯一の街へと進化しました。スポーツ観戦がカジノに並ぶ新しい滞在目的となり、街全体のブランド価値と経済的魅力をさらに高めています。

財源の循環が街を成長させる仕組み
ラスベガス経済の根幹には、「稼いだ利益を再投資する財源サイクル」があります。カジノやホテルから得られるゲーミング税・観光税・宿泊税が、道路・空港・スタジアム・コンベンション施設の整備へ再投資される仕組みです。
たとえば、アレジアント・スタジアムの建設には宿泊税を原資とした債券7億5,000万ドルが活用されました。
観光収益が公共投資へとつながり、その投資が再び観光需要を生む。こうした「循環型の財源モデル」がラスベガスの成長を支えています。行政が単なる規制者ではなく、民間と共に都市を育てるパートナーとして機能している点がラスベガスの発展を支えている大きな特徴です。
ラスベガスが変えた「カジノの常識」世界最大カジノ都市のビジネスモデルと大阪IR成功のヒント
ラスベガスは「カジノの街」からカジノ・ホテル・スポーツ・エンタメが融合する統合型リゾート都市(IR)へと進化しました。その成長を支えるのは、行政が単なる規制者ではなく、民間と共に都市を育てるパートナーとして機能している点です。カジノやホテルから得られる税収を空港やスタジアム、コンベンション施設へ再投資し、その成果が再び観光収益として循環する。この仕組みが、ラスベガスを世界最大のIR経済都市へ押し上げました。
2025年開業予定の大阪IR(MGM大阪)も、同様に「収益を地域に循環させる仕組み」を築けるかが成功の鍵かもしれません。行政と民間が連携し、観光税や入場料を都市インフラや雇用へ再投資することで、持続可能なIRモデルが実現します。大阪IRもこのモデルを取り入れることで、持続可能な都市型リゾートとして成功を収めることが期待されます。
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