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  • Writer's picturePrism ラスベガス

米テクノロジー企業の大量レイオフ。でもそんな悪いことじゃない?

今、アメリカ大手テクノロジー企業では相次いで「レイオフ」(解雇)が続いています。

グーグルやマイクロソフト、ツイッターやメタなど大手テクノロジーは次々にレイオフを開始。テIBM社は先週3,900人の解雇を発表しました。アメリカのみならず世界中で活躍するテクノロジー業界に努める多くの社員は不安を隠しきれません。


しかし、米テクノロジー企業たちは実は経営順調?


そんなテクノロジー企業従業員にとっては心臓に不安がかかりそうな波乱の2023年2月。

アメリカテクノロジー業界の現状と今後の見通しをお伝えします。


At Will (アットウィル)で採用、そして解雇


アメリカは日本と違い採用も解雇もとてもシンプル。会社が必要なスキルや能力を持つ人物が現れると即採用!

一方で、解雇も早い。朝会社に就いたら自分のカードでドアがあかない・・・。なんてよくある話です。


「At Will (アットウィル)」

というのもアメリカの採用は「At Will (アットウィル)」という雇用形態をとっており、これはつまり会社側、雇用される側共に「雇用する、雇用されるという意思(Will ウィル)があることに基づいて雇用契約がかわわれる」というもの。

「雇用する意思があるから雇用している、雇用する意思がなくなったから解雇する」ということ。反対に雇用される側も「雇用される意思はなくなったら退社する」。要するに、雇用したくなくなったらすぐ解雇、雇用されたくなくなったらすぐ退社してよいという契約。映画などでもよく見かける「君、解雇」「もう今辞める」という一風大げさ?な場面は実はとてもリアルな現実。(次の職場との調整ができている人は2週間ほどの引継ぎ期間をきちんと終えて退社しますが、そうでない場合は今日で退社するから・・なんてよくある話です。)



今回の大手テクノロジー企業のレイオフの際も、朝会社のシステムにログインできなくなった。朝ミーティングが全部キャンセルされて人事部とのミーティングだけが入れてあった。ビルに入れなかった、、、。

と急なお話ばかり。


そんなAt Will (アットウィル)という雇用背景もあり、コスト削減の為に人員を削らなければならない場合は何十人、何百人とカット。ビジネス方向転換となれば必要でなくなったビジネスエリアの社員はバッサリ解雇して、新しい注力分野で大量採用となんとも大胆なものです。



2023年2月までの直近でレイオフをしている企業


Alphabet アルファベット

Googleの親会社は1月グローバル従業員の約6%に当たる1万2000人の解雇を発表


Amazon アマゾン

2022年末から約18,000 人を解雇


Meta メタ

2022年11月から約11,000人を解雇


Dell デル

2023年2月約6,500人以上を解雇


Zoom ズーム

2023年2月約1,300人を解雇


この他、音楽配信プラットフォームのSpotify (スポティファイ)、オンラインホームグッズ販売のWaifair (ウェイフェア)、決済プラットフォームのStripe (ストライプ)、スナップチャットアプリのSnap(スナップ)、ファイナンシャルアプリのRobinhood (ロビンフッド)、決済プラットフォームのPaypal (ペイパル)、ライドシェアのLyft(リフト)、クリプト運営のCoinbase(コインベース)、自動車通販のCarvana(カーバーナ)などなど、2月に入っても続々と解雇がつづいています。


大型レイオフ(解雇)しているけれど成長中?


そう、数百、数千人単位でレイオフを行っている大手テクノロジー企業たちですが、経営に苦しんでいるわけではないようです。大量レイオフが続く中でも、実は会社自体は継続して拡大しているのです。また、今回のレイオフ後も実はコロナ前に比べると従業員数は増加しているのです。


ではなぜこんないレイオフが相次いでいるのか?


それは今後を見据えた「バランス」作戦(と、コロナ以前から採用し過ぎた人員の手放し)が原因。


では経緯を追ってなぜ、そんなことになったのか、見てみましょう。


コロナ前2015年~2020年

実はコロナ以前、シリコンバレーに代表される大手テクノロジー企業は大成長中でした。アメリカIT業界団体CompTIAが米国労働統計局のデータを分析したところ、パンデミックまでの2015年~2020年の5年間で、ハイテク産業は130万人の労働者を増やしていたとの結果もでているほど。


コロナ

そして、2020年3月頃からコロナでいろいろ変化はあったものの、日本に比べアメリカはコロナ明けがひと足早く、消費者需要(特にテクノロジー関連)は2020年後半には回復傾向へ向かった。

コロナ明け2021年

その後、迎えた2021年、コロナ明けに勢いよくビジネスチャンスをひろげたかったテクノロジー業界は「採用し過ぎ?」「お給料だしすぎ?」と懸念されるほどの「採用し放題」にのりだし、大手同士で取り合いになるほど自社タレントを確保した。2022年~2021年の間、トップテクノロジー企業のAlphabetアルファベット)、Apple(アップル)、Amazon(アマゾン)、Meta(メタ)、Microsoft(マイクロソフト)は急ピッチで大量採用をおこなっていたのです。


2022年末~

しかし、ここへ来て始まった2022年からのアメリカ連邦予備銀行による「金利引き上げ」


2022年3月頃からインフレにブレーキをかけようと、米国連邦予備銀行は金利の引き上げを始めました。

するとビクッと反応するのが外部からの資金調達が多いテクノロジー業界。このままインフレ、金利上げと続くとビジネス拡大にも資金調達にかなりのコストがかかってくることは目にみえています。


それと同時に消費者はコロナマネー(コロナ救済などの政府からのお金)を既に使い果たしており、インフレで食品買うにも大変な時期、高いテクノロジー製品には手があまり出にくくなってきました。(コロナ明け2021年の一時のコロナマネーを使ったコロナで溜まったのうっぷん晴らしの過剰消費が落ち着いたという見方もできますが・・)


そして、近い将来の見通しがみえてきた2022年末~2023年の今日。

大手テクノロジー企業たちは一気に「採用し過ぎた」人材を手放し、今後やってくる様々な分野のコスト増加に備え、人員削減によるバランス体制を整えているのです。





大量レイオフでもまだ仕事は盛りだくさん!


コロナ後の2021年好待遇!大採用時期に採用され、そして今回2023年にレイオフされてしまったテクノロジー業界の従業員さんたちはもちろん、悲しみと混乱の渦中でしょう。でも、


アメリカの2023年の失業率は3.4%


2008年のリーマンショック後が10%、コロナ中で14%、コロナ回復後も5%~8%、

リーマンショックから10年もかけて回復、景気が比較的よかったコロナ直前の2019年でも3.5~後半でしたから、2023年2月の失業率はとても低いといえるでしょう。


また、アメリカ全体でみるとまだまだ人で不足、そんな大量採用、大量解雇!と大胆な採用ができないトップ企業以外は人員確保、維持に必死です。その影響もあり、2022年に前年比4.2%増加といわれていた給与標準は2023年はそれを超える4.6%増になるのではとの予測、企業は採用に積極的です。


特にトップテクノロジー企業で働いていたスキルを持った皆さんは次の職場探しには困らないだろうともいわれています。







今後はどうなるの?


「レイオフ」とニュースであまり騒がれると消費者の景気低迷への恐怖をそそってしまいますが、労働人口の傾向という目線でみるとこれまで資金力のあるトップ企業にごっそり抱え込まれていた人材が他の一般企業へ移動しはじめるのではないでしょうか。そしてそれにより、雇用コストの急騰も少しは落ち着くのかな?とも思います。


一方で、今のところはシリコンバレー発、テクノロジー企業に多い傾向であるとはいえ、これらのトップ企業が近い将来を見据えたコストのバンランス作戦を「一斉」に始めていることは確かです。実際、メタ社も2023年は「効率」の年だともいっているようです。これらのレイオフトレンドとトップ企業の動向がどう業績に表れるか、どれだけ早く数字に表れるか、2023年夏を終えた時期頃にならないとわからないかもしれません。


そんなテクノロジー企業のトレンドにもまれるだけの人もいれば、それに生き延びる元気な労働者もいます!もしかしたらこの大量レイオフを機会にビジネスを初め、将来のビリオンダラーになる企業が生まれるかもしれません。コロナからいろいろ不安定な世界がつづきますが、淡々と毎日をこなすだけでなくこういいたビックピクチャーのトレンドを頭に想像しながら次のステップを考えてみるのも有益かもしれませんね。






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