アジアのIRカジノ市場ガイド2026|IRカジノビジネス解説 第5回
- Prism ラスベガス

- 3 日前
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更新日:15 時間前
執筆・監修:プリズムソリューションズ(米国法人ラスベガス)
はじめに
IRカジノビジネス解説シリーズでは、これまで「IRとは何か」「日本のIR計画」などをテーマに解説をしてきました。今回は、日本のIR開発においても重要な参考事例として注目されてきた、アジアのカジノ市場をご紹介します。
1850年代から続く長い歴史を持ちながら、2020年以降に大きく業態を転換し進化を続けるマカオ。かつて某ラスベガスカジノオーナーが「日本IR参入のための準備運動だ」と称していたシンガポールは、今や世界が手本とするカジノ市場へと成長しました。アジアには、それぞれ異なる特性を持つ多様なカジノ市場が広がっています。今回はアジアのどの国にどのようなカジノ・IR施設があるのか、そしてどのような市場が形成されているのかを解説します。
【注】本記事はIRカジノ事業にご興味のあるビジネス関係者向けに各市場の概要をお届けする目的で執筆していますのであくまでも参考情報としてご覧ください。2026年5月5日時点での情報です。
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アジアのカジノゲーミング産業とは
日本では2030年秋ごろ、MGM大阪が日本初のIRカジノとして開業予定です。しかしアジアのカジノ市場の歴史は意外なほど古く、その始まりは1850年代にさかのぼります。当時ポルトガルが植民地であったマカオでカジノを合法化したことが出発点です。ラスベガスでカジノが合法化されたのは1931年のことであり、マカオのカジノはラスベガスよりも長い歴史を持ちます。
現代のアジア市場が大きく動いたきっかけは、2002年のマカオにおけるカジノ経営権の外資開放です。それまでは香港の実業家スタンレー・ホーが40年間にわたり独占してきた市場でしたが、開放を機にラスベガスや香港の大手オペレーターが相次いで参入し、マカオは急速に世界有数のカジノ市場へと成長しました。その流れを受け、シンガポール・フィリピン・韓国・マレーシアなどでも次々とカジノの合法化が進み、アジア全体のカジノ市場が形成されていきました。
2026年現在、アジアの主要カジノ市場はさらなる転換期を迎えています。これまでのVIP客や特定の送客国への依存から脱却し、より幅広い国・地域からのマス顧客を取り込む方向へと、IR開発の軸足が移りつつあります。

アジアのカジノ市場:世界における位置づけと2026年の傾向
世界のランドベース(実カジノ施設)市場を地域別に見ると、北米・アジア・ヨーロッパの順に規模が大きくなっています。北米(米国・カナダ含む)は約560億〜565億米ドル(約8兆4,000億円)規模で世界最大、アジアは約400億〜430億米ドル(約6兆〜6兆4,500億円)規模で第2位、ヨーロッパは200億〜300億米ドル(約3兆〜4兆5,000億円)規模で第3位です。(1ドル150円計算)*公式情報を元に試算

ただし都市単体で比べると、マカオが世界トップです。2024年のマカオ年間GGRは約284億米ドル(約4兆2,600億円)に達しており、同年のラスベガス・ストリップを含むネバダ州の年間GGR約88億米ドル(約1兆3,200億円)の約3.2倍の規模となっています。
アジアのカジノ市場はこれまで、VIP・ハイローラー(高額プレイヤー)への依存度が高く、来訪者もギャンブルを主目的とした顧客が中心でした。また中国・韓国など主要送客国の政策や経済動向に業績が左右されやすいという構造的な課題も抱えていました。こうした背景から近年では、一部の富裕層に依存したビジネスモデルからの転換が加速しています。プレミアム層(一般より消費余力のある顧客)やビジネス客、さらにはカジノを目的としない一般観光客も幅広く取り込む「IR型」カジノ開発への戦略的シフトが、アジア各地で顕著に進んでいます。
アジアでIRカジノがある国・地域の一覧
アジア地域でカジノが合法化され、IRまたはカジノ施設が存在する主な国・地域は以下の通りです。
マカオ(中国特別行政区)、シンガポール、フィリピン、韓国、マレーシア、カンボジア、ベトナム、ラオス、スリランカ、ネパールです。そしてここに2030年、日本(大阪IR)が加わる予定となっています。
【表】アジア主要IRカジノの一覧
国・地域 | 自国民入場 | 主要施設数 | 代表施設 | 特徴・備考 |
マカオ | 可 | 20施設 | ザ・ヴェネチアン・マカオ、ギャラクシーマカオ、MGMコタイ | 世界最大のカジノ市場。2020年以降IRリゾートへ方向転換 |
シンガポール | 可(入場料あり) | 2施設 | マリーナベイ・サンズ、リゾート・ワールド・セントーサ | 2のIRカジノ施設に免許を限定。MICE拠点 |
フィリピン | 可 | 約60施設 | オカダ・マニラ、ニューポート・ワールド・リゾーツ | IRリゾートが拡大中。アジアの中では現在注目市場 |
韓国 | 可(1施設のみ) | 17施設 | パラダイスシティ、カンウォンランド | カンウォンランドを除き 外国人専用 |
マレーシア | 可 | 1施設 | ゲンティン・マレーシア | 国内唯一のカジノリゾートが高原に立地 |
カンボジア | 不可 | 約100施設* | ナガワールド他 | 首都プノンペンに大型IRリゾートのナガワールド、他はビーチリゾート地域に多数 |
ベトナム | 入場停止中(政府の決定待ち) | 10施設 | フーコック島、ホーチャム、中部ベトナムなどのリゾート地に点在 | 外国人向け中心。自国民入場は限定的 |
2026年5月5日時点での情報
*2025年末時点で約195施設、2026年4月に91施設閉鎖との報道あり確認中
マカオ|アジア最大・世界最大のカジノ市場
市場の規模と背景
マカオは中国の特別行政区として、中国国内で唯一カジノが合法化されている地域です。2001年にカジノ経営権が外資に開放されると、ラスベガスや香港の主要オペレーターが相次いで参入。2006年にはGGRがラスベガスを上回り、マカオは都市単体で世界第1位のカジノ市場となりました。現在は、マカオ政府とコンセッション(経営権契約)を結ぶ6社の民間事業者がカジノを運営しています。
カジノ法改訂、2026年直接運営カジノのみへ
マカオのカジノ施設はこれまで、歴史的な市街地であるマカオ半島と、埋立地に開発されたコタイ地区の2エリアに集中していました。しかし2023年施行の新カジノ法により、第三者がカジノライセンス保持者からライセンスを借用して運営する「サテライトカジノ(衛星カジノ)」は段階的に廃止され、2025年12月30日をもって全11施設が閉鎖されました。これによりマカオのカジノ産業は、6事業者による直営IR施設のみで構成される構造へと完全に移行しています。
♠ 代表的な施設
ザ・ヴェネチアン・マカオ(The Venetian Macao)
2007年、コタイ地区に開業。ゲーミングフロア面積は世界最大級で、ラスベガスのザ・ヴェネチアンと同様にイタリアのヴェネツィアをテーマとした内装が特徴です。客室3,000室はすべてスイートルームで、350店舗以上のショッピングモール、40店舗以上のレストランを完備しています。ラスベガス・サンズ社の関連会社が運営。
ギャラクシーマカオ(Galaxy Macau)
2011年開業。2015年に施設面積を約1,100,000㎡(東京ドーム約20個分)へ拡張し、客室4,000室、120店以上の飲食施設、200店以上のブランドショップを擁するマカオ有数の大型IRです。ギャラクシー・エンターテインメントが運営。
シティ・オブ・ドリームス(City of Dreams)
2009年開業。スロットマシン約2,000台とテーブルゲームに加え、ホテル、ショッピングモール、エンターテインメント施設を一体的に備えた複合型IRです。香港のメルコリゾーツが運営。
MGMコタイ(MGM Cotai)
2018年開業。ダイナミックな光と色彩をテーマとした外観が特徴で、約1,400室のホテル、スパ、レストラン、ショッピングモールを擁します。日本でMGM大阪を開発中の米国MGMリゾーツ・インターナショナルが運営。マカオ半島にも2007年開業の「MGMマカオ」を持ち、2施設体制でマカオ市場に参入しています。

シンガポール|2施設のみ、厳格に管理されたIR市場
市場の概要
シンガポールでは2005年にカジノが合法化され、2010年に2施設のIRカジノが開業しました。国内でカジノ免許を取得できる施設数は2施設のみに限定されており、世界でも有数の厳格な管理規制が設けられています。
ギャンブル依存症対策として、シンガポール国籍者・永住者には24時間あたり150シンガポールドル(約1万7,000円)または年間3,000シンガポールドルのカジノ入場料が課せられています。入場料収入は公共・社会・慈善目的に充当されます。海外からの訪問客は入場料なしで利用可能です。
市場規模はマカオほど大きくはありませんが、免許を2施設に限定することで1施設あたりの収益性は非常に高く、世界トップクラスの利益率を誇っています。
♠ 代表的な施設
マリーナベイ・サンズ(Marina Bay Sands)
2011年グランドオープン。MICE(国際会議・展示会)のビジネス層をターゲットとした大型IRで、コンベンションセンター、美術・科学博物館、55階建てホテル(2,500室以上)、約200店以上のリテールモールを完備しています。ラスベガス・サンズ社の関連会社が運営。
リゾート・ワールド・セントーサ(Resorts World Sentosa)
2010年2月開業。セントーサ島に立地し、ユニバーサル・スタジオ・シンガポールや水族館を含む、ファミリー層にも対応した複合型リゾートです。マレーシアのゲンティン・グループ系列のゲンティン・シンガポール社が運営。

フィリピン|アジアの新興成長市場
市場の規模と背景
フィリピンでは1976年にカジノが合法化されましたが、現在のようなIR型の大型リゾート開発が本格化したのは2000年代後半以降です。マニラを中心にIR施設の整備が加速し、政府系企業PAGCORが主導して開発したエンターテインメントシティ(通称E-City)に海外の大手カジノ事業者による大型IRが集積。アジア有数のカジノ市場へと成長してきました。
フィリピンのランドベースカジノ市場は、PAGCORからライセンスを受けた民間IR事業者と、PAGCORが直営するカジノで構成される二層構造となっています。2025年の実績では、民間IR事業者の年間GGRが約30.4億米ドル(約4,560億円)と市場の大半を占め、PAGCOR直営カジノは約2.09億米ドル(約314億円)となっており、ランドベース全体では約32〜33億米ドル(約4,800億〜5,000億円)規模の市場です。
2026年現在は、中国・韓国など主要送客国からの訪問客減少やカジノ規制改正によるVIP客減少の影響を受けながらも、政府のビザ緩和政策を追い風に観光需要が回復しており、市場は再び拡大基調にあります。2026年2月には、IRが集積するマニラ近郊の経済特区クラーク地区で韓国系デベロッパーのHann Philippines Incがゴルフ・高級住宅・教育・ウェルネス・カジノを融合したラグジュアリー型複合施設「Hann Reserve」をオープン。2026年5月には同じくクラーク地区にてフィリピンの不動産企業Belle Corp(シティ・オブ・ドリームス・マニラの地権者)が新たなIRカジノのPAGCORライセンスを取得し、メルコリゾーツを含む複数の海外オペレーターと運営パートナー選定の交渉を進めており、総投資額約3億米ドル規模の新規IR開発が動き出しています。
♠ 代表的な施設
オカダ・マニラ(Okada Manila)
2016年開業。エンターテインメントシティ内に立地し、フィリピン最大規模のカジノフロア、複数の高級ホテル棟、大型噴水ショー、スパ、多数の飲食施設を完備。日本のユニバーサルエンターテインメントが開発した大型IR。
ニューポート・ワールド・リゾーツ(Newport World Resorts 旧: Resorts World Manila)
2009年開業。マニラ国際空港に隣接する立地が最大の特徴。マレーシアのゲンティン・グループが運営し、複数のホテル、ショッピングモール、劇場を一体的に備えた複合型IRです。
シティ・オブ・ドリームス・マニラ(City of Dreams Manila)
2015年グランドオープン。メルコリゾーツが運営するエンターテインメントシティ内の大型IR。高級ホテル3棟、カジノ、エンターテインメント施設を擁しており、インターナショナルなMICE需要にも対応しています。

韓国|外国人向けと自国民向けが共存するカジノ市場
韓国で最初のカジノが合法化されたのは1967年。同年、オリンパスホテルカジノ(後にパラダイスカジノとなる)が韓国初のカジノとして開業しましたが、当初は外国人のみに入場が許可されていました。韓国国籍者(自国民)のカジノ入場が認められた施設が初めて設立されたのは2000年。江原道旌善郡に「カンウォンランド(江原ランド)」が開業しました。現在でも韓国国籍者(自国民)のカジノ入場が認められている唯一の施設です。それ以外の施設は外国人専用となっています。
♠ 代表的な施設
パラダイスシティ(Paradise City)
2017年グランドオープン。仁川国際空港近接の大型リゾート。カジノ(外国人専用)、高級ホテル、アートスペース、スパ、エンターテインメント施設を備え、訪韓観光客やMICE需要の取り込みを図っています。日本企業のセガサミーホールディングスと韓国のパラダイスグループの合弁運営。
カンウォンランド(Kangwon Land)
2000年開業。江原道旌善に位置する韓国唯一の自国民入場可能カジノです。ホテル、スキー場、ゴルフ場などを併設したリゾートとして、国内需要を中心に安定した収益基盤を持っています。韓国政府(産業通商資源部)が筆頭株主の公営企業として運営されています。

マレーシア|唯一のカジノ、ゲンティン・マレーシア
マレーシアでは、クアラルンプール郊外の高原に立地する「ゲンティン・マレーシア(Genting Malaysia)」が国内唯一のカジノリゾート。大型IRリゾートで、高原の涼しい気候と豊富なホテル・エンターテインメント施設を備えています。マレーシア国籍者の入場も許可されています。運営はマレーシアのゲンティン・グループ。
ゲンティン・マレーシア(Genting Malaysia)
1971年開業。カジノに加えてホテル群、テーマパーク、ショッピングモール、エンターテインメント施設を備える東南アジア有数のIRとして知られている。ゲンティン・グループはラスベガスでもリゾーツ・ワールド・ラスベガスを運営。

カンボジア|プノンペンに大型IRが集積
カンボジアではカジノは外国人専用であり、1996年以降自国民のギャンブルは法律で禁止されています。全国のカジノ施設数は2025年末時点で約195施設(うち約160施設は湾岸リゾートエリアのプレアシアヌーク州に集中)でしたが、2026年4月に政府が91施設の閉鎖を発表したため、現時点での正確な稼働施設数は確認中です。
カンボジアを代表するカジノリゾートは、首都プノンペンに所在する「ナガワールド(NagaWorld)」です。香港上場企業NagaCorpが運営する大型IRで、ホテル、コンベンション施設、ショッピングモールを擁し、主に中国本土・東南アジアからの観光客を対象としています。
ナガワールド(NagaWorld)
1995年に開業し、NagaWorld 2の拡張により規模を拡大。カジノ、ホテル、レストラン、ショッピング、エンターテインメント施設を一体的に備えています。プノンペンおよび周辺地域において一定条件下でのカジノ独占権を有しており、カンボジアのカジノ産業の中心的存在です。香港のNagaCorpが運営。
最近の傾向
近年、カンボジア国内の一部カジノ施設がオンライン詐欺の拠点として悪用されている実態が国際的に問題視されています。こうした状況が観光産業や外国投資、国際的信用に悪影響を及ぼしていることを受け、カンボジア政府は中国をはじめとする各国からの圧力も背景に、違法行為が疑われる施設の閉鎖・ライセンスの見直し・関係者の摘発を全国規模で実施しています。

ベトナム・ラオス・スリランカ・ネパール
ベトナムでは外国人向けカジノが1990年代から存在していましたが、2017年の改正法施行により、初めて一定条件を満たした自国民が特定のカジノに試験的に入場できる枠組みが整備されました。現在、ライセンスを持つカジノは全国で10施設が営業しており、主に外国人観光客を対象としています。自国民のカジノ入場については、パイロットプログラムが2024年12月末に一旦終了し、2025年以降は政府の新たな政策決定を待っている状況です。ベトナムは2025年、過去最高となる2,117万人の外国人観光客を記録し、ベトナムカジノ市場の主な顧客は中国からの来訪客で、隣国のタイからの観光客数をも上回り全外国人観光客の25%を占めています。
ラオス・スリランカ・ネパールにもカジノ施設は存在しますが、規模・インフラ面ではアジアの主要IR市場と比較して限定的な段階にあります。
コロナ・リゾート&カジノ・フーコック(Corona Resort & Casino Phu Quoc)
ベトナム・フーコック島に位置する同国初の本格的なIRリゾートです。5つ星ホテル・ヴィラ、カジノのほか、テーマパーク、サファリ、ゴルフ、レストラン、スパなど多様な観光機能を備え、東南アジア有数のリゾートとして位置づけられています。ベトナムで初めて自国民のカジノ入場パイロットプログラムが実施された施設でもあります。

まとめ
アジアのIRカジノ市場は、マカオを筆頭に、シンガポール・フィリピン・韓国・マレーシア・カンボジア・ベトナムなど多くの国・地域に広がっています。日本でも2018年のIR整備法成立を受け、大阪でIR開発が進められており、アジア市場における各国IRの事例・競合関係の理解はますます重要な課題となっています。今回は基アジア各国のカジノ業界について概要と基本情報の解説をお届けしました。
参考資料:Canadian Gambling Statistics、AGA、マカオ政府博彩監察協調局(DICJ)統計データ、Singapore Totalisator Board公式情報、PAGCOR(Philippine Amusement and Gaming Corporation)公式統計データ、IAG(Inside Asian Gaming)報道
ほか各種公開情報



