ラスベガスMGM事例から見るIRリゾートと非ゲーミング売上の重要性
- Prism ラスベガス
- 3 日前
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IRカジノビジネス解説 第3回
執筆・監修:プリズムソリューションズ(米国法人ラスベガス)
ラスベガスIRの現場からカジノ・ゲーミング業界の専門家が、現地実務と国際規制の知見をもとに解説しています。
統合型リゾート(IR)では、カジノだけでなくホテル、レストラン、ショー、ショッピング、会議施設などの「非ゲーミング(ノンゲーミング/Non-Gaming)」部門が重要な役割を果たしています。本記事では、ラスベガスのIRカジノを例に、特にMGMの事例を参考にしながら、IRにおける非ゲーミング売上の重要性について解説します。
1. IRカジノとは何か
簡単なおさらい
統合型リゾート(IR)とは、カジノを中心にホテル、レストラン、ショッピング、エンターテイメント、会議施設などを組み合わせた大型の観光複合施設です。IRカジノの基本的な仕組みについては、シリーズ第1回の記事で詳しく解説しています。→ 「カジノとは何か|IRカジノビジネス解説 第1回」
IRカジノの特徴は、カジノ単体の施設ではなく、観光・エンターテイメント・ビジネスイベントなど複数の機能が統合されている点にあります。近年のIRでは、カジノ以外の 「非ゲーミング(ノンゲーミング/Non-Gaming)」部門 が非常に重要な役割を担うようになっています。
2. なぜ非ゲーミング部門が重要なのか
IRカジノではカジノが中心施設ではありますが、ホテル、レストラン、ショーなどの非ゲーミング部門が集客や収益の面で重要な役割を果たしています。非ゲーミング部門が重要とされる理由は主に次の3つです。
カジノを利用しない観光客も取り込める(大人だけではなくファミリーにもアピール)
滞在時間が長くなり消費が増える(カジノ以外で訪れるきっかけをつくる)
収益源を分散できる
以上の内容はカジノリゾート側のビジネス戦略のようにも見えますが、最も重要なのは来訪者の嗜好の変化です。
後にも説明をしますが、近年ラスベガスを訪れる来訪者の目的が「カジノでのギャンブル」から
カジノ以外のエンターテイメント
展示会やビジネスイベントへの参加
などへと変化しています。この変化に対応せずにIRカジノリゾートのビジネスは成り立たなくなります。
3. ラスベガスの非ゲーミングコンテンツ
ラスベガスのIRカジノでは、カジノ以外にも様々なエンターテイメントが提供されています。
特にIRが集積するラスベガスでは、街全体がIRリゾートの機能を支える都市構造となっています。
非ゲーミングカテゴリー | 内容 |
エンターテイメント | ショー、コンサート、スポーツイベント |
飲食 | レストラン、バー |
ナイトライフ | ナイトクラブ、ラウンジ |
ショッピング | ブランドショップ、モール |
MICE | 会議、展示会、企業イベント |
ウェルネス | スパ、プール |
アート・観光 | 美術展示、建築デザイン |
ラスベガスはカジノ都市として知られていますが、近年は世界有数のMICE(展示会・国際会議)都市でもあります。ラスベガスの観光局である Las Vegas Convention and Visitors Authority によると、ラスベガスでは年間 約2万件以上の会議・イベント が開催され、約500万人以上の展示会来場者 が訪れています。これはラスベガスの年間来訪者(約4,000万人)の 約1割以上が展示会関連の来訪者であることを意味します。
また、近年のラスベガスではスポーツイベントも重要な観光コンテンツとなっています。
2023年からは毎年11月にフォーミュラ1ラスベガスグランプリ(Formula1Las Vegas Grand Prix)が開催され、プロアメフトチームのラスベガス・レイダース(Las Vegas Raiders) の本拠地である アレジアント・スタジアム(Allegiant Stadium)ではNFL(全米プロアメフトリーグ)の試合や そのチャンピオンシップであるSuper Bowl LVIII が開催されるなど、ラスベガスは国際的スポーツイベント都市としての存在感を高めています。
さらにラスベガスでは過去10年で
T-Mobile Arena(2016)
Las Vegas Ballpark(2019)
Allegiant Stadium(2020)
など複数の大型スポーツ施設が新設されており、2027年には新しいMLB球場の開業も予定されています。

4. MGMのラスベガスIRを分解してみる
ARIA Resort & Casino(アリア) の事例
IRカジノの構造をより具体的に理解するため、ここでは大阪IRでMGM大阪を建設中のMGM Resorts International(以下、MGM)が運営するラスベガスのIRカジノアリア・リゾート&カジノ(ARIA Resort & Casino :以下ARIA) を例に非ゲーミングコンテンツを見てみます。ARIAは、MGMが開発した都市型複合開発 CityCenter Las Vegas の中核施設として 2009年に開業した五つ星レベルのモダンでスタイリッシュな高級IRカジノです。
ホテル客室は約4,000室を有し、平均宿泊価格は1泊約200USドル~400USドル(約3万円~6万円)。レストラン、ショッピング、スパ、ナイトライフ、MICE施設などを備えています。MICE施設だけでも約30万平方フィート(約2.8万㎡)の会議・展示スペースがあり、これは東京ドームのグラウンド約2面分に相当する規模です。
ARIAの主なレストラン
ラスベガスのIRでは、レストラン自体が観光コンテンツとして機能しています。ARIAでも世界的シェフや人気ブランドによるレストランが多数営業しており、食事目的で訪れる来訪客も多く見られます。
レストラン | ジャンル | 特徴 |
Carbone | イタリアン | ニューヨーク発の人気イタリアンレストラン |
Catch | シーフード | ロサンゼルスなどでも展開する高級シーフード |
Bardot Brasserie | フレンチ | 有名シェフによるフランス料理レストラン |
Jean Georges Steakhouse | ステーキ | ミシュランシェフ監修のステーキハウス |
Din Tai Fung | 台湾料理 | 世界的に有名な小籠包レストラン |
Javier's | メキシカン | 人気モダンメキシコ料理 |
Lemongrass | タイ料理 | 東南アジア料理を提供する人気レストラン |
Gymkhana | インド料理 | ロンドン初ミシュランレストラン |
2025年12がつにはロンドンのミシュランレストランでもある人気インド料理「Gymkhana」がオープン。この他にもバッフェレストラン、カクテルラウンジ、カフェ、などランチでも、ディナーでも満足できるレストランが揃っており、観光客、地元客ともに「美味しいレストランが揃うIRリゾート」として知られています。
ナイトライフ・イベント・エンターテイメント
ラスベガスのIRカジノでは、夜間のエンターテイメントも重要な非ゲーミングコンテンツです。
ARIAでも有名DJの音楽を楽しめるクラブや高級カクテルラウンジなどもそろい、夜間の消費を生み出しています。
施設 | 内容 |
JEWEL Nightclub | DJイベントなどが開催されるナイトクラブ |
Liquid Pool Lounge | プールサイドでのDJイベント |
バー・ラウンジ | カクテルバーなどのナイトスポット |
MICE(会議・イベント)
ARIAには約30万平方フィート(約2.8万㎡)のMICE施設があり、会議施設としては、約43室の会議室と7つのボールルームを備えています。世界最大のテクノロジー展示会CESをはじめ、政府系イベントやMicrosoft、AWS、IBMなどの企業カンファレンスの会場としても利用されています。
施設 | 内容 |
ARIA Convention Center | 国際会議・企業イベント |
展示スペース | 展示会やビジネスイベント |
ショッピング
ARIAの周辺には高級ショッピング施設も整備されています。ARIAに隣接する商業施設 The Shops at Crystals には、ルイ・ヴィトン、グッチ、プラダなどのラグジュアリーブランドが出店しています。このような高級ショッピング施設もIRの重要な非ゲーミングコンテンツの一つであり、観光客の消費を生み出す役割を果たしています。
IRカジノの収益構造と変化
ネバダ州のカジノ統計によると、2024年のラスベガスIRカジノ全体の収益構造はゲーミングが約43%、ホテル客室、飲食、エンターテイメントなどの非ゲーミングが約57%を占めています。現在のラスベガスでは、カジノだけでなくホテルやレストラン、イベントなどの非ゲーミング部門が重要な収益源となっています。
これは2000年代頃から見られた変化で、かつてはカジノ収益がIRの中心でした。例えば1980年代(下表)には、ネバダ州のカジノ収益の約6割がゲーミング収入であり、ホテルやレストランなどの非ゲーミングは補助的な位置づけにとどまっていました。しかし来訪者の嗜好の変化やそれに伴う大型リゾート開発やMICE、エンターテイメント産業の拡大により、2000年代にはゲーミングと非ゲーミングの比率が逆転、現在のラスベガスのIRはカジノ中心のビジネスから、ホテル、飲食、ショッピング、イベントなどを組み合わせた総合観光産業へと変化しています。
ネバダ州の統計を見ると、ラスベガスのIR収益構造は次のように変化しています。
1984年~2024年ゲーミング対非ゲーミングの割合(ラスベガス全体の数字)
年 | ゲーミング | 非ゲーミング |
1984年 | 約59% | 約41% |
1990年代 | 約55% | 約45% |
2000年頃 | 約45% | 約55% |
2010年代 | 約40% | 約60% |
2020年代前半 | 約35% | 約65% |
2024年 | 約43.19% | 約56.81% |
次に2024年の収益構造を詳しく見ると、非ゲーミングの内訳は次のようになります。
2024年のネバダ州カジノ収益構造(ラスベガス全体の数字)
部門 | 割合 |
ゲーミング部門 | 43.19% |
非ゲーミング部門 | 56.81% |
上記「非ゲーミング部門」の内訳(2024)
非ゲーミング部門 | 割合 |
ホテル客室 | 24.81% |
飲食 | 14.57% |
エンターテイメント | 6.74% |
その他(小売・スパなど) | 10.69% |
合計 | 56.81% |
データ出典:UNLVゲーミング研究センター、ネバダ州ゲーミング管理委員会(NGCB)、各IR企業決算資料より
まとめ
日本では現在、大阪IR(MGM大阪)の開発が進められています。大阪IRでもホテル、MICE、エンターテイメントなどを組み合わせた大型の統合型リゾートが計画されています。
ラスベガスの事例を見ると、IRの成功はカジノ単体ではなく、レストラン、イベント、ショッピング、会議などの非ゲーミングコンテンツによって支えられていることが分かります。IRの価値はカジノだけではなく、非ゲーミングコンテンツを含めた総合的な観光体験にあります。ラスベガスの事例は、日本のIRを考えるうえで重要な参考モデルと言えるでしょう。
ラスベガスMGM事例から見るIRリゾートと非ゲーミング売上の重要性|IRカジノビジネス解説 第3回をお届けしました。次回もIRカジノについて、現場からの解説をお届けします。
■■■ 著者プロフィール ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
プリズムソリューションズ(PSI)は、ビジネス支援ソリューションを提供するテックファームグループの米国現地法人です。ラスベガスに拠点を置き、カジノ・ゲーミング業界に特化したシステム開発およびコンサルティングを通じて、カジノ運営の実務に直結する領域から日本IRの発展に貢献しています。
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