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IRカジノの種類(リゾート型と地域型):IRカジノビジネス解説 第2回

  • 執筆者の写真: Prism ラスベガス
    Prism ラスベガス
  • 2月18日
  • 読了時間: 9分
執筆・監修:プリズムソリューションズ(米国法人ラスベガス)

ラスベガスIRの現場からカジノ・ゲーミング業界の専門家が、現地実務と国際規制の知見をもとに解説しています。

はじめに:IRカジノは「一つの形」ではない

前回の記事では、日本IRカジノとは何かをテーマに、IRカジノ事業の基本構造と日本型IRの特徴について解説しました。第2回となる本記事では、世界のIRカジノ事業で採用されている代表的な2つのモデルである下記2つについて事例を交えながら解説していきます。


■ リゾート型IRカジノ

■ 地域型(ローカル型)IRカジノ


IRカジノといっても、その立地、役割、収益構造、地域経済との関係性は大きく異なります。本稿では、その違いを整理することで日本IRの位置づけを理解するための視点を提示します。

IRカジノは立地と役割で分類される

世界のIRカジノには立地と役割で様々なタイプがあります。


  1. 観光集客を主目的とする「リゾート型」IR

  2. 地域住民の利用を前提とする「地域型」IR


これは単なる規模の差ではなく、ビジネスモデルの差を意味します。


■IRカジノの種類 1


観光・滞在を軸に設計された「リゾート型」IR


観光客の来訪そのものを目的に整備され、MICEやホテル、エンターテイメント施設と一体で滞在を創出するモデルで、前回の記事「日本IRカジノとは何か|IRカジノビジネス解説 第1回」でもご説明したように、日本初のIRカジノとなる大阪IRがこのカタチです。この他にも日本IRカジノ構想中にリゾート型IRモデルの参考にされたアジアを代表するリゾート型IRが下記です。

用語:MICEとは会議(Meeting)・報奨旅行(Incentinve travel)・国際会議(Conference)・展示会(Event)などのビジネス目的の集客イベントの総称を指す


代表例

  • Marina Bay Sands(シンガポール・都市観光の象徴となる都市・リゾート型IR)

    公式ウェブサイト https://www.marinabaysands.com/

  • Resorts World Sentosa(シンガポール・リゾートアイランドに立地するリゾート型IR)

    公式ウェブサイト https://www.rwsentosa.com/en


ポイント


  • 観光・滞在を軸に設計されており、収益源はカジノ施設利用者だけではない

  • 外からの顧客を流入することにより注力


リゾート型IRカジノは、国内外からの観光客を呼び込み、滞在そのものを生み出すことを主目的とするモデルです。カジノ施設単体の集客力に依存せず、ホテル、MICE、エンターテインメント、商業施設、飲食などを一体開発することで「目的地」としての価値を形成します。例えばラスベガスのリゾート型IRカジノでは、大型会議室やバンケットルーム、ブランドショップ、著名レストランが並び、プールエリア一つを取っても遊園地規模。さらに大型コンサート会場やショッピングモールを併設し、施設外へ出なくても滞在が完結するリゾート構造を持ちます。このため、会議参加者、観光客、エンターテイメント施設来場者、買い物客など、カジノを利用しない来訪者も含めた総合的な滞在消費が事業の基盤となります。


近年のラスベガスでは、ギャンブル目的のみの来訪者よりも、コンサートやスポーツ観戦を主目的とする来訪が増加する傾向にあります。施設設計もカジノ中心ではなく、宿泊稼働率、イベント開催、回遊動線など滞在時間を最大化する都市開発的発想で構成され、客層も成人利用者に限らずファミリー層まで広がります。


結果としてリゾート型IRは、単なる娯楽施設ではなく「複合観光産業」として機能し、宿泊・交通・小売・飲食を含めた広域経済への波及効果を生み出す点に特徴があります。


リゾート地セントーサ島にあるリゾーツワールドセントーサはユニバーサルスタジオシンガポールにも隣接。
リゾート地セントーサ島にあるリゾーツワールドセントーサはユニバーサルスタジオシンガポールにも隣接。

■IRカジノの種類 2

地域住民の利用を前提とする「地域型」IR


リゾート型IRほどの観光規模は持たないものの、ホテルやイベント施設も備えた複合娯楽施設として生活圏の需要を取り込むモデルが「地域型」IRモデル。世界からの観光客を呼び込むための滞在拠点ではなく、地域住民の余暇利用や近隣エリアからの週末滞在などに対応しています。主目的は地域の余暇消費の受け皿となり、安定した税収と雇用を生み出す点にあります。

ラスベガスにもリゾート型IRとは異なり地域型IRビジネスを行っているカジノ企業が複数あります。下記事例にあるDurango Casino and Spa はラスベガスエリアの郊外に7件、他10件ほどの小規模カジノゲーミング施設を運営する地元大手グループStation Casinosの一つ。マーケティング広告でも「We love locals (ローカル大好き)」を掲げ、そのとおり、地元民で賑わうカジノです。


代表例

  • Durango Casino and Spa 他(米国・ラスベガス郊外の住民向けカジノ)

    公式ウェブサイト https://durangoresort.com/

  • The Orleans Hotel and Casino(米国・ラスベガス郊外地元客中心の大型ローカルカジノ)

    公式ウェブサイト https://orleans.boydgaming.com/


ポイント

  • 地域住民の娯楽・需要を支えるIRカジノモデル

  • 雇用創出と税収確保を主な役割とする郊外経済インフラ


地域型IRカジノは、主に地元住民や近隣エリアの利用者を対象とします。ホテルや商業施設、イベント機能を併設する場合もありますが規模は比較的小さく、観光誘致の役割は限定的です。旅行の目的地となる施設ではなく、生活圏の余暇消費を受け止める娯楽拠点として機能します。来訪者は海外観光客よりも近隣地域の利用客が中心となり、特に常連客を前提とした集客設計・運営が行われます。


施設構成も、大規模コンサートホールや高級レストランより、ボウリング場や映画館、日常利用しやすいカジュアルレストランなど、日常的な娯楽・飲食施設が主体となります。とはいえ、来訪者の消費の中心はIRカジノ施設の利用に集約される構造となります。


地域型IR事例:Durango Casino and Spa
地域型IR事例:Durango Casino and Spa 郊外なので車で訪れる地元客が多く、車でもアクセスが良い立地。

その他のモデル

例えば、韓国・仁川国際空港に隣接する Paradise City Casino のように、宿泊滞在を前提とせず、乗り継ぎや移動の合間の時間を消費へ転換する短時間利用型の「トランジット型」IRカジノ。


また、Seneca Niagara Resort & Casino(米国・ナイアガラ)など他近隣IRカジノのように、既存観光地の滞在時間を延ばす役割を担うIRカジノも存在します。昼は観光、夜は娯楽という役割分担を生み出すことで、地域全体の消費を拡大させる構造です。


これらのモデルは、単独で観光地となるリゾート型とも、生活圏需要を中心とする地域型とも異なり、既存の人の流れに付加価値を与えるIRカジノ施設として機能します。


リゾート型IRカジノと地域型IRカジノの違い【比較表】

*一般的なリゾート型IR、地域型IRカジノの要約比較の一例として作成。

項目

リゾート型IRカジノ

地域型IRカジノ

立地

観光都市・リゾート地

地方都市・郊外

主な利用者

国内外の観光客

地域住民・近隣居住者

集客手段

国際観光・イベント (例:展示会出張・観光の目的)

地域常連客

(例:日常の余暇)

利用頻度

1回きり・一部リピーター

常連客多い

規模

大規模(IR一体型)

(例:カジノホテル客室数2,000室以上)

中小規模 (例:カジノホテル客室数500~1,000)

主要収益源

観光消費+IRカジノ

IRカジノ収益中心

カジノ利用イメージ

滅多に遊ばないカジノで一回きりギャンブル

頻繁に訪れ、適度な金額で安定ギャンブル

付帯施設

ホテル、MICE、商業、エンタメ

(例:一度は行きたい有名レストラン、大物アーティストのコンサート)

最小限または簡易施設など

(例:地元定番、安価なレストラン、地元民がよく利用するボーリング場や映画館併設)


日本IRが採用するのは「リゾート型IRカジノ」モデル

日本のIR制度は、地域住民の常時利用を前提とした娯楽施設ではなく、観光・滞在を軸とした複合施設として設計されています。カジノ単体の売上に依存する構造ではなく、宿泊、MICE、エンターテインメント、商業施設などの滞在消費全体で収益を成立させる形が求められています。この構造が採用された背景には、次のような政策背景(一部抜粋)があります。


  • 観光立国政策

    訪日外国人旅行者の増加と滞在型観光の促進を通じ、宿泊・飲食・購買を含む観光消費の拡大を図る観点から、外需を取り込む滞在型施設として位置付けられています。日本政府は2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、旅行消費額15兆円の達成を目標としており、IRはその達成に資する国際観光拠点の一つとして位置付けられています1


  • 国際MICE誘致

    国際会議や展示会を開催できる大規模施設を整備し、ビジネス客の来訪と長期滞在を促進することで、年間を通じた安定的な集客を図る。日本政府の「新時代のインバウンドアクションプラン」でもビジネス目的の訪日客は重点誘致分野とされ、一般観光客より滞在が長く消費単価も高いため、消費額拡大と需要の平準化に寄与するとされています2


  • 都市開発・地域経済への波及効果

    IRを単独施設ではなく都市開発の核と位置付け、交通、宿泊、商業、雇用など周辺産業への広範な経済効果を生み出すことが目的とされています3


  • 社会的配慮を制度に反映しやすい構造

    入場回数制限や入場料制度などの利用管理措置と組み合わせることで、日常的な頻繁利用に偏らない来訪パターンを前提とした運営が可能となります。観光・滞在を主目的とする施設構成と併せることで、来訪目的が分散され、カジノ利用は滞在体験の一要素として位置付けられる設計となっています4


このように、日本のIR制度は単なる娯楽施設の「解禁」ではなく、収益性と社会的受容性、規制の安定運用、そして地域活性化との両立を見据えて、リゾート型を中心に設計された仕組みといえます。


(2026年2月現在、2026年度からの第5次観光立国推進基本計画は協議中)


まとめ

IRビジネスモデルを理解することが理解の出発点

IRカジノには、観光客を呼び込み地域外から需要を創出する「リゾート型」と、地域住民の継続利用を基盤とする「地域型」という異なるビジネスモデルが存在します。両者の違いは規模ではなく、収益の成り立ち・来訪頻度・地域社会との関係性といった事業構造そのものにあります。日本のIR制度は、観光振興と地域活性化、そして安定的な制度運用を両立させる観点から、滞在消費を中心とするリゾート型モデルを前提に設計されています。



この記事のおさらい要点3つ:

  1. IRカジノは「リゾート型IR」と「地域型IR」で役割とビジネスモデルが異なる

  2. 日本IRは「リゾート型IR」モデルを前提としている

  3. これらのモデルの違いは社会との関係性や規制設計にも影響する



IRカジノの種類(リゾート型と地域型)IRカジノビジネス解説 第1回をお届けしました。

次回は、統合型リゾート(IR)ラスベガスの実例と売上構成をもとに、「非ゲーミング部門」がIR収益をどのように支えているのかを解説します。



■■■ 著者プロフィール ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■


プリズムソリューションズ(PSI)は、ビジネス支援ソリューションを提供するテックファームグループの米国現地法人です。ラスベガスに拠点を置き、カジノ・ゲーミング業界に特化したシステム開発およびコンサルティングを通じて、カジノ運営の実務に直結する領域から日本IRの発展に貢献しています。


公式サイト:テックファームグループ Website プリズムソリューションズ Website


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