今回はカジノとAML(マネーロンダリング)の関係についてご説明します。
カジノにマネーロンダリングの懸念?と目にしますが、一体マネーロンダリングとカジノがどう関係があるのか?
未だによくわからないという方も多いと思います。
しかし、
カジノ企業がマネーロンダリングを行っているということではないんです。
カジノもマネーロンダリングに利用されてしまう可能性がある場所ということ。
今回はなぜカジノがよくマネーロンダリングの温床と言われてしまうのか。ご説明します。
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★マネーロンダリングとは?はこちらの「3分でわかるマネーロンダリング〜公認アンチマネロンスペシャリストが解説〜」でご説明しているのでこちらを。
★カジノ業界向けに行われた【カジノ事業者向け】AML(Anti-Money Laundering)セミナーレポートでもカジノのAML対策の様子が伺えますので是非ご覧ください!
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カジノとAML(マネーロンダリング)の関係
マネーロンダリングとは
マネーロンダリング(資金洗浄)とは犯罪を隠蔽する為に、
犯罪から得た資金を犯罪の跡がつかないようにきれいにすること。
例えば銀行強盗で手に入れた現金をそのまま使用して高級車を買って乗り回していると・・・それ自体とても目立ちますが使用した現金の識別番号を辿れば銀行強盗で盗まれた現金が使用されたとバレバレですね?
なので、犯罪者は強盗した現金で高級車を購入するだけではなくそれを転売。転売して得た新たな現金でジュエリーを購入してまた転売するなどして元々の強盗現金と自分が関わりがなくなるように犯罪の形跡を「洗浄」するのです。これがマネーロンダリング。そしてその対策をAML / Anti-Money Launderingアンチマネーロンダリングと言います。
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マネーロンダリングはどこでもできてしまう
犯罪者が資金を洗浄する為に利用する方法や場所は様々。下記はほんの一部なのです。近くのデパートでも可能。現金を受け付ける場所であればどこでもマネーロンダリングに利用されてしまうのです。
銀行、証券会社
保険会社
旅行会社
架空企業
コンビニのギフトカード、金券ショップ
ジュエリーショップ
そしてカジノもマネーロンダリングに利用されてしまうリスクがある場所の一つというわけです。
繰り返しますが、カジノが悪徳営業でマネーロンダリングを行っている。というわけではないのです。
銀行や保険会社、旅行会社、デパートなんかと全く同じ。現金を取り扱うことが多い業務形態ゆえにマネーロンダリングに利用されてしまう可能性がなきにしもあらずということなのです。
ではカジノでどうマネーロンダリングが行われてしまうのか?
Photo by Karolina Grabowska
カジノのマネーロンダリング事例と対策
事例①スロットマシンで現金つぎ込み洗浄
アメリカのカジノでは依存症防止対策のため、クレジットカードなどをスロットマシンで使用することができません。よってスロットマシンでは現金、もしくはスロットバウチャー(スロットマシンで遊び終わった際にプリントされる換金チケット)が利用されています。なので現金を次々につぎ込むのは一見普通の光景。
銀行強盗して奪った現金をカジノに持ち込んだ犯人。現金をスロットマシンにつぎ込みます。そしてスロットマシンをあまり回すことはなく、すぐに「キャッシュアウト」ボタンを押して紙のスロットバウチャーを発行します。そしてそのバウチャーをカジノ内で換金すれば強盗金の洗浄が完了。
<対策>
場所やスロットマシンにもよりますが、最近では遊ばずに換金だけをする行為があるとアラートがあがる機能がついているものもあります。
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事例②カジノキャッシャーを通して換金
カジノ内には現金を両替してくれたり、チップの換金をしてくれるケージと呼ばれるキャッシャーがあります。マネロン犯罪者はそのキャッシャーを銀行窓口のように利用。現金を崩してほしい、10ドル札10枚を100ドル札にしてほしい、カジノ口座(ギャンブル資金を保管する一時口座)に10万円入金したいと犯罪資金を持ち込みます。そして数時間後再来場、同じような取引を繰り返しケージを通して現金を新しい現金に換金。
<対策>
カジノは「銀行以外の金融機関」としてアメリカ政府から厳しいマネーロンダリング対策を行うよう指示されています。また、カジノもマネーロンダリングに利用されてはならないと独自に取引のモニタリングを実行。ケージで行われる取引はその顧客の情報、取引内容をすべて記録しており、一顧客につき、そしてその関係者による一定金額以上の取引はカジノのAML担当部署により監査、監視が行われます。30万円相当以上、100万円相当以上の取引ごとにも法定の報告義務に沿ってカジノ担当者、そして管轄当局に報告が行われています。また、各カジノにはAML専門部署があり、24時間マネーロンダリング防止業務を行っています。
事例③チップに換金、チップから現金へ
犯罪金を手にしたマネロン犯罪者はテーブルゲームに座るとチップを購入。一度に50万円~100万円を換金して遊ぶ人もたくさんいるカジノでは大金を手にテーブルゲームを訪れる人も多い。そんな中犯人はちょこっと遊んだふりをしてゲームを終了。そのチップを持ち去ります。そして同じその犯人自身が、もしくは共犯者にチップをこっそり譲渡。ケージへ出向いてチップを現金化します。こうすることによりテーブルゲームを通して現金を洗浄。
<対策>
テーブルゲームでの大金のチップ購入も前述同様記録対象になりますので誰が、いくら、いつ、換金したかはカジノ側にしっかり記録してあります、そして数百のカメラが監視するカジノではテーブルについている顧客の顔はしっかりと記録されています。チップをこっそり譲渡するすがたもカメラにばっちり(ちなみに、カジノのカメラはスマホを手にメッセージをしている人のメッセージの内容も確認できるほどの精度が高いものが利用されています。)そしてケージでは同じく、だれが、いつ、いくらチップを現金化したか、法定義務が生じる金額の取引をおこなっているか(取引を幾度かに分割してもちゃんとトラッキングしてあるのです)しっかり記録。怪しいければすぐにAML担当者による調査が行われます。
Photo by cottonbro
カジノもAML対策頑張っているんです
前述の通り「銀行以外の金融機関」指定されているカジノ企業はカジノ内で多くのAMLリスクの高い現金取引が行われていることはしっかり把握しています。
それもあり、AML対策も厳重。カジノが関与したわけではなく、ちょっとAML対策を油断をしてしまいカジノがマネーロンダリングに利用されたということが発覚すると・・・連邦政府から、ゲーミング取締り委員会から厳しい罰則が。企業イメージのダーメージもありますが内容によってはAML対策不備の罰金だけでも数億円~数十億円。
日本では「カジノとマネロン」となんだかダークなイメージが多いようですがカジノは決してマネロンに関与したいわけではないんです。現金取引が多い故にマネロン犯罪者に利用されてしまう可能性があるということなんですね。
そんな厳しい環境で行われているアメリカカジノ業界のAMLマネロン対策は日本カジノ開場の際にもきっと良い参考例になることと期待しています。
そんなカジノ業界向けに行われた【カジノ事業者向け】AML(Anti-Money Laundering)セミナーレポートでもその様子が伺えますので是非ご覧ください!
Photo by Karolina Grabowska