現在のアメリカの高校生、大学生は就職、キャリアについてどういう意識をもっているのか、2022年成績優秀者を認定、奨学金などを授与する全米高等学校奨学金協会(NSHSS)が行った11,495人に対する調査ではこんなことが明らかになりました。
今後、数年間に採用される新しい世代 -アメリカではジェネレーションZ(GenZ)-のキャリアに関する考えを知ることは採用戦略立てに役立ちます。国も変われば教育もかわり、就職事情も変わればキャリアに対する考えも異なります。グローバル採用をされる企業様は是非採用計画検討の情報の一部としてこういった調査結果もご参考にしてください。
ジェネレーションZのキャリア意識
インパクトが大きい5つの要素
ジェネレーションZにの就職、キャリア意識について影響を及ぼす5つのポイントは
1.平等性
アメリカで最も他民族な背景で育ったこのジェネレーションZは雇用主にもそれを反映した「平等性」を求めています。実際に、ジェネレーションZ回答者の33%が英語以外の言語を話し、22%が自身の人種・民族的な多様性の背景がキャリア選択に影響すると回答する多民族な人達。そんなジェネレーションZは性別や人種を問わず、すべての従業員が公平に扱われることを求めています。
Z世代が雇用主に対して最も重要視しているのは、当然のことながら、すべての人が公平に扱われること。それに次いで生活の質の確保、雇用者の柔軟性、企業の社会的責任と続きます。
2.STEMとヘルスケア
ジェネレーションZはSTEMとヘルスケアに影響を与えたいと考えており、24%が健康関連の問題やヘルスケアに関する自身の経験が、STEMとヘルスケアに影響を与えたと報告。
コロナパンデミックの影響もあるのでしょうか、24%が自身が直面した健康関連の問題やヘルスケアに関する自身の経験が、キャリアの選択に影響を与えたと回答しています。健康・医療系に加え、エンジニアリング(18%)、科学(18%)、テクノロジー(12%)も人気。
*STEMとは:科学・技術・工学・数学の教育分野の総称。Science, technology, engineering, and mathematics
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3学習が大好き
ジェネレーションZは学ぶことが好きで、特に実地訓練から得られる体験的な学習が好き。
大学卒業後、最初の仕事に就く前に大多数(82%)がインターンシップに参加することを期待。また、64%がインターンシップの準備のために資格取得コースを受講することに非常に興味を持っているとの回答。
ジェネレーションZが初めて正社員として就職する際、最も希望する仕事は「キャリアアップにつながるスキルを学べる仕事」(67%)。そして、昇進への道が2番目に重要であるのに続いて、3番目に重要なのは専門的な能力開発の機会と回答。
実際、63%が雇用主から何らかの対面のトレーニングを受けることを期待しています。また、上司には、コミュニケーション能力の高い上司に次いで26%のが、自分から学べる上司を望んでいます。
4.リモートより対人がいい!
NSHSSの調査ではまた、パンデミック時の遠隔地での学校教育が若い人材にとって「不利」であったことから、ジェネレーションZがオンラインでの仕事やトレーニングに「うんざり」していることが明らかになりました。
ジェネレーションZは、リモートより現場で実地経験を積みたいと考えているようです。
調査回答者のうち、リモートワークが非常に重要であると回答したのはわずか23%。ジェネレーションZの63%が雇用主からの直接の対面トレーニングを望んでいるのに対し、オンライン・トレーニングに賛成しているのはわずか13%でした。
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5.大学の学費ローンの壁
NSHSS奨学生の78%が、何らかの学費ローンを抱えることになると予想。負債額の中央値は28,000ドルであると予想しています。34%は、学生ローンの負債によって自分のパッションを追求することができなくなると予想しています。そして60%が、就職後少なくとも1年か2年は実家で暮らすことになると予想。
一方・・・この負担を軽減するために、ジェネレーションZは雇用主に助けを求めています。
回答者の44%は、学費ローンの返済を雇用主が支援してくれることを期待。しかし、これは、一般的に雇用主が提供する福利厚生制度とは大きく異なるもの。(大学院の学費補助などはありますが、個人の学費ローンの返済手当、は一般的にまず企業からは提供されませんね)
回答者のジェネレーションZの初任給は50,000ドル(約680万円)~69,999ドル(950万円)と予想されており、回答者の47%が、フレックスタイム制や時間外手当よりもその他の福利厚生の充実を最も重要視。
ジェネレーションZにとって重要なのは
ジェネレーションZが高校、大学時代に経験したコロナや近年のロシア・ウクライナ情勢といった社会背景がやはり大きく影響を与えているようで、回答したジェネレーションZがもっとも重要としている課題は「人権」。前年の調査と比較して科学技術革新への関心は24%から34%に上昇し、世界平和は初めてトップ10にランクイン。一方で、トップ10から外れたのは「いじめ・暴力防止」で、学校や大学がバーチャル化、ハイブリッド化している間に、その発生率が減少しているのが原因とも見られている。
読んでいて「へー」と思われた箇所も多いのではないでしょうか。この調査は奨学金をもらっている成績優秀者が対象ですので、一概にアメリカのジェネレーションZはこう求めている!とは言い切れませんが、今回お伝えした「ジェネレーションZのキャリア意識」一つの参考としてご活用ください。
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