ラスベガス事例で見るギャンブル依存防止対策|IRカジノビジネス解説 第9回
- Prism ラスベガス

- 25 分前
- 読了時間: 4分
第8回では、ネバダ州のカジノ免許制度を解説しました。今回は、免許を取得した事業者が日々の運営で守らなければならない「依存防止対策」を取り上げます。米国ネバダ州は、カジノゲーミング、スポーツベッティング、インタラクティブゲーミング(オンライン)が合法化されており、全米で最も歴史が長く成熟したゲーミング市場です。長い運用の蓄積があるぶん、依存症対策(責任あるゲーミング/Responsible Gaming)の制度も、州法での枠組みだけではなく具体的な現場規則レベルの技術規則まで具体化されています。今回は事例を交えながら解説します。
【注】2026年8月時点の公表情報に基づく解説です。法的助言を目的とするものではありません。
【用語について】本記事では読みやすさを優先し「ギャンブル依存症」という表現を用いていますが、ネバダ州の条文で使われているのは "problem gambling"(問題ギャンブリング)という語です。"problem gambling" は、医学的な診断名ではなく、生活や仕事、家計に支障をきたす程度のギャンブル行動を幅広く指す行政・実務上の用語です。日本語では「問題ギャンブリング」「ギャンブル等依存症」などと訳されます。このほか、対策そのものを指す語として "responsible gaming"(責任あるゲーミング)が使われ、事業者側の取り組み全体を表す言葉として定着しています。
ラスベガス事例で見るギャンブル依存防止対策
① 自己制限
信用供与、小切手の換金、DM販促を行うカジノは、顧客がこれらへのアクセスを自ら制限できる制度を設けなければなりません。オンラインゲーミングの運営者の場合は、自己制限を希望する顧客の名簿(氏名・住所・口座情報)を管理し、これらの顧客の口座を閉鎖しなければなりません。
また、オンラインゲーミングでの新規口座の開設時には、過去の自己制限の有無を確認しなければならず、オンラインのシステムは、顧客から自己排除の申し出があった時点で全ゲーミングを即時制限し、宣伝リストから除外、するといった機能を備えていなければなりません。
② 掲示と情報開示
カジノは、ゲーミングエリア(カジノフロア)やケージ(カジノのキャッシャー窓口)付近、現金支払機(ATM等)の近くなど目につく場所に、ギャンブル依存症の性質と兆候を記した書面と、全米問題ギャンブリング協議会等のフリーダイヤル番号を掲示または備置しなければなりません。(ネバダ州のゲーミングエリア内ではATMの設置が許可されています)
オンライン口座では、アクセス時に注意喚起メッセージを表示しなければならず、24時間対応の相談ホットライン番号と相談サイト(WhenTheFunStops.org)の案内を行い、プレイ開始前にはプレイヤーが必ず通過するページに、問題ギャンブリング情報サイトと自己排除申込サイトへのリンクを設置しなければなりません。

③ 広告・プロモーション
カジノ(ランドベース、オンライン含む)は、品位、良識、誠実さに沿った広告・広報活動を行わなければなりません。これに反する広告、例えば「絶対勝てるカジノ」などといった虚偽または重大な誤解を招くものなどは、カジノ運営免許の処分事由となる「不適切な営業方法」に該当します。
④ 上限設定
スポーツベッティングの口座では、一定期間内の入金上限を顧客が設定できるようにしなければなりません。オンラインゲーミング(オンラインカジノ)の口座では、これに加えて、一定期間内の損失上限、入金上限、プレイ時間の上限、そして期間を定めた利用停止などを顧客が選択し、設定できるようにしなければなりません。
⑤ 資金の信用供与と決済手段
カジノでは金融機関からゲーミング機器への直接の電子送金を、クレジットカードで行うことが禁止されています。
ただし、この禁止はインタラクティブゲーミングシステム(オンラインゲーミング)には適用されません。一方、オンラインゲーミングでは、事業者は顧客へゲーミング資金の信用供与してはなりません。関連会社や代理人による与信から得た資金の入金も受け入れてはなりません。
⑥ 従業員研修
カジノは、ゲーミングフロアで顧客と直接接する従業員全員に研修を行わなければなりません。内容は、ギャンブル依存症がどのような状態でどんな兆候が現れるのか、そして相談窓口や支援プログラムの情報を顧客に案内する方法です。これは従業員にギャンブル依存症か否かの判断を委ねるのではなく、顧客がサポートが必要なときに適切な窓口へつなげられるようにすることが目的とされています。
⑦ アルコール
カジノは、明らかに酔っている、または薬物の影響が見て取れる顧客にギャンブルをさせてはなりません。また、カジノエリアで、明らかに酩酊している者に酒類を無料提供してはなりません。
まとめ
ラスベガス事例で見るギャンブル依存防止対策をお届けしました。ラスベガスが所在するネバダ州の依存症対策は、自己排除、掲示、広告、上限設定、信用供与の制限、従業員研修、アルコールといった複数の分野にわたり、事業者が用意すべき制度や機能として具体的に定められています。長年の運用を経て整備されてきたこれらの仕組みは、日本のIRにおける依存防止対策を考えるうえでも、参考になる部分が多いのではないでしょうか。



